光学 関連メモ
○ はじめに・・ 異なる光学理論の狭間で・・ いわゆる「レンズ光学」、と呼ばれる分野は、以下の3つに大別されます。 幾何光学 → 光は、一直線に進む特性のモノと仮定した理論 波動光学 → 光は、電磁波という波であると仮定した理論 量子光学 → 光は、量子という微細な粒子であると仮定した理論(量子力学) 幾何光学においては、光はまっすぐ進み、特性の異なる素材の境界で反射屈折するという単純な理論しか扱わないので、レンズ設計も易しく可能です。スネルの法則と三角関数、微分と二次関数等を使い、簡便なレンズ設計シミュレーションが可能です。 波動光学は複雑な積分等が生じ、かなり難解です。但し理論的エアリーディスク径の計算式は、実用上理解しておく必要性があります。レンズコーティングも波動光学の範疇となります。量子光学は、直接に一般レンズの設計等に関わることはほとんどなく、レーザーや情報解析等の先端分野で使われる分野となります。波動光学同様、複雑な積分等が生じ、かなり難解となります。 ○ 古典理論と近軸理論 幾何光学は、古典理論と近軸理論の2つに大別されます。 近軸理論が確立したのは、1840〜50年代にかけてで、特にサイデルによる5収差の計算理論はその後のレンズ設計に大きな影響を与えました。 近軸理論が確立する前は、スネルの法則と三角関数、微分と二次関数等を使用した古典理論≒実光線追跡による設計ですが、球面収差等の補正に関しては厳密解を求めることが出来ますので、コンピュータを駆使する現代のレンズ設計の基準でも優れた設計方式ではあります。 近軸光線追跡は、sinθ=θ等の概略計算を使う近似的手法であり、特にFの短いレンズに関し最終的には、 実光線追跡 による厳密な光学設計が必要となります。 アクロマート 対物レンズ設計 |
○ レンズ設計光学の現状は・・ レンズ設計の実践については、F8程度の単純な2枚玉対物レンズのみ、リトロー公式等の便利な方程式がありますが、複雑な構成のレンズに関しては、レンズ構成の改良→光線追跡を繰り返し行う「自動・最適化」機能で設計を詰めるのが現状のようです。 レンズ設計〜 変化表 最新のレンズ設計ソフトが普及する以前は、「自動・最適化」の部分を、過去のレンズ構成を参考に手動で(当時のコンピュータ+古い設計ソフトで)行っていました。 レンズ設計光学とは、簡単に説明すれば、収差補正論のようなものです。球面・コマ・非点・湾曲・歪曲の主要5収差の補正です。他には公差解析、材料特性分析等も重要です。 ○ レンズ設計のコンセプト 望遠鏡レンズと、カメラ用望遠レンズの設計コンセプトは多少違います。 F 5、前後で設計した(フォトビジュアル望遠)レンズで比較した場合、望遠鏡レンズは平行光線(無限大)前提の視野中心でのシャープネス・分解能 ≒ストレールレシオを重視し、視野周辺の星像スポットも、30ミクロン以下が基準になるでしょう。色バランスはさほど重視されず、コントラストも平均レベルで認容されます。 一方、カメラ用望遠レンズ(単焦点)の場合、まず一番の違いは光線の角度です。平行光線(無限大)以外の至近距離での光学性能も要求されます。色バランスに対する要求も厳しく、コーティングも複雑となります。 スポット≒点光源の分解能も重要ですが、むしろ面積体の解像力(コントラスト) ≒ MTFの数値が重要です。 フォトビジュアル望遠レンズ
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○ 解像力(分解能)に関する考察 (1) カメラレンズの評価基準として一番使われているMTF(Modulation Transfer Function)は、面積体のコントラスト再現性能の評価基準です。点光源の恒星と、面積体の星雲彗星、月惑星等を含めた総体的な解像力を示す為には、写真・眼視共にストレールレシオとMTFの双方が必要と考えられます。 概ね大口径の場合、実測ストレール比は低下しますが、光量に助けられMTFは向上します。小口径は逆となります。面積体の解像力(分解能)は光量に委ねられる部分が強く、大口径のアドバンテージが発揮されます(暗所のコントラスト・解像力は低いという事象です。) ・ 点光源(恒星) の解像力 ≒ 分解能 ○ 面積光源(星雲) の解像力 ≒ (分解能 * 単位面積光度の平方根) 重星等においての解像力は、純然たるストレール比に近似しますので、高精度の小口径が優位です。 対物レンズ設計概論 ○ 解像力(分解能)に関する考察 (2) 望遠鏡の分解能基準として有名なドーズリミット。実はドーズの私的な感覚の基準で、物理的な理論の裏付け等はありません。一方、レイリーリミットは、波動光学理論による計算の裏付けがあります。 さて、ドーズリミット・116秒/口径mmに対し、レイリーリミット・122秒/口径mm(500nm)ですが、実際は分離するとは言うものの、エアリーディスクは接蝕したままです。下のシミュレーション画像は250秒/102mm。この離角では完全にエアリーディスクは分離します。(完全分離リミットは、200秒/口径mm位) どれほど長焦点・高精度の望遠鏡でも、そのシャープネス(分解能)は口径の限界を超えることはありません。当該口径に対する最大値は、波動光学におけるレイリー値と基本的に一致します。(ただ、微星の場合はエアリーディスクの周辺部が肉眼で認識されないので、星像は小さくなったように感じられます。) 口径10cm、こと座ε2星 シミュレーション星像 ![]() ○ 解像力(分解能)に関する考察 (3) 望遠鏡のカメラ撮像での写真分解能は、スポット径が同一の場合、焦点距離に比例します。 理論的エアリーディスク ≒ スポット径でシミュレーションすると・・ 75/600mm F 8.0 → 最小スポット直径、10 ミクロン ≒ 3秒角 150/1200mm F 8.0 → 最小スポット直径、10 ミクロン ≒ 1.5秒角 となります。 レンズ光学系以外の要素は、撮像素子の密度、ガイドの精度、気流(シーイング)、ピント調整 etc があり、 理論写真分解能を、実際の撮影 (長時間露出)で達成する為には、高いハードルがあります。 長時間のガイド撮影における解像度(星像スポット)は、気流+オートガイドの精度が 3〜4秒程度なので、 トータルのスポット直径は通常、5〜7秒角程度以上になります。(すばる望遠鏡、約 2秒角) デジタル対応 ・撮影システム
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○ 星雲・彗星・微光星等の認識性能 星雲星団の認識性能は、先のMTF値に近似しますので、大口径有利となります。微光星雲を認識する為には、一定以上の面積*SN比 (輝度)が必要です。 また認識性能は、バックグラウンドとのS/N比に関連するので、単位面積あたりの輝度により微調整する必要があります。瞳径2mm以上での点光源(恒星)の場合は、単純に 7mm→2mmまで倍率を上げることにより、認識能力≒極限等級が約 1.3等向上します (バックグラウンドが2.5^2倍 ≒極限等級1等差の近似計算式) 観望時における星像のシャープ感は、また別の尺度での評価となります。 望遠鏡 ・極限等級テスト ○ シャープ感の分析 眼視において、星像のシャープ感を感じる要素として、実効ストレールレシオと瞳径があります。ストレールレシオは80%以上で瞳径は2mm以上が基本です(視力1.0以上)。ストレールレシオは気流と口径にも大きく影響されます。一般には小口径の方がよりシャープ感があります。 写真レンズにおいての視野中心解像力の極値は、F値ごとの球面収差曲線とエアリーディスク径曲線の交点と計算できます。一般的な設計の写真レンズの場合、F5.6〜8間にそのピークがあります。開放では球面収差が大きく、絞り過ぎると干渉によりシャープネスが落ちることになります。 F値 → スポット径 ・計算 |