望遠鏡・対物レンズ 設計概論 U




1.望遠鏡・・・ それぞれの目的と、必要な口径は?(月惑星重星等)


望遠鏡の目的として、眼視 (低〜高倍率)、及び写真 (直焦点〜コリメート)の2つに大別されます。

多くの望遠鏡の標準F値が、8 前後の現在、その使用範囲は広く、オールラウンド (フォトビジュアル鏡筒)
と呼んで差し支えないものです。

望遠鏡の口径サイズと、それぞれの使用目的を区分すると

80mm (3インチ) クラス → 手軽な観望、及び写真用 (モバイル望遠鏡)
100mm (4インチ) クラス → 一般観望、及び写真用 
130mm (5インチ) クラス → 観測、及び高解像度写真用 

・・に、概略区分されます。


一般の天体観望において、どの位の口径が必要なのかを検証すると・・

まず月、視直径は約 30分ですので、望遠鏡での見かけの大きさは20倍で約10度となります。この大きさでは月の細部構造はあまり判りません。40倍で約 20度と細部が見えてきます。80倍に上げれば、見かけの大きさ約 40度と、更に細部の構造が見えてきます。

80倍で月全体(概ね半月前後)を見る場合、一番の問題点はその明るさです。口径を絞りながら明るさ&分解能を見ると、口径 70mm〜80mm 位がバランスが良いようです。100mm以上の口径ですと月は明る過ぎ、見掛けの分解能もあまり変わりません。また50mm以下ですと分解能が低下するのが判ります。

月面の詳細、及び惑星、重星等は、100mmクラス以上に、150倍程度以上の倍率が良好です。100mmクラスで250倍程度迄が実用範囲となります。 
 102mm アポクロマート




2.望遠鏡・・・ それぞれの目的と、必要な口径は?(星雲星団彗星等)

一方、星雲星団彗星等・・、明るく大きな対象のM45・プレヤデス星団の場合、視直径は約120分と月の約4倍。全体を眺めるには20倍前後が良好です。80mmクラスの口径(瞳径4mm)で素晴らしい眺めです。

大きくやや薄いM31・アンドロメダ星雲も、80mm(瞳径4mm)、20倍前後が良好です。瞳径が3mmを下回るとやや暗くなり、周辺部の薄い部分が見づらくなります。明るく小さな対象、M57・リング星雲等の場合は、80mm40倍(瞳径2mm)の方が良好です。

100mmクラス以上ですと、光量にやや余裕が出来、大型球状星団等も、100倍前後で美しく眺められます。







3.本格的望遠鏡 (アポクロマート屈折 ※)


分解能・レイリー値(エアリーディスクの半径)が、1秒角になる口径が120mm となり、このクラスから本格的な観測が可能な口径となります。

月惑星・重星の観測がコンスタントに使える口径も、120〜130mm程度となります。気流に恵まれれば、
250〜300倍 (瞳径 0.4 〜0.5mm前後)の倍率が良好に使えます。

温度順応にやや時間が掛かりがちですが、屈折望遠鏡は透過光なので、反射に比較すると気流の影響は半分程度となります。安定すれば気持ちの良い星像となります。
130mmアポクロマート 


※ アポクロマートの定量的定義 (基準) とは?

一般的には、可視光全域 (770-400nm/A'-h線)で、
ストレールレシオ 80% 以上、とされます。




4.本格的望遠鏡 (反射系)


分解能・レイリー値(エアリーディスクの半径)が、0.5秒角になる口径が約 250mm となり、このクラスは、
良気流に恵まれれば、可視光線における写真・眼視で、充分な観測データが得られます。

温度順応に、やや時間が掛かります。
 250mm 反射光学系 




5.屈折 VS 反射 そのメリット&デメリット


光量において、反射に劣る屈折レンズ。しかし運用上において、様々なメリットがあります。

眼視観測においては、透過光による SN比の高いハイコントラストな像質、悪シーイングにも強いです。
写真観測においては、光軸&直角精度 (センタリング&スクエアリング) を維持しやすく、安定した継続観測データを望めるのが、屈折レンズの強みです。

反射は、機材の調整がかなり困難です。大口径になれば、悪気流への対処が困難となります。

温度順応も重要な要素で、かなりの時間が掛かることが多いです。特に、車の中でレンズ・反射鏡の内部まで温まった場合、最悪明け方まで順応時間がかかる場合もあります。10センチ以下の2枚玉レンズでしたら、極めて短時間で順応が完了します。

日本国内で、1メーターを超える口径では、恒星・星雲、眼視・写真共にピントのボケが大きくなり、製造コストを考慮すると、非効率な観測システムとなります。

大口径・望遠鏡テスト




6.望遠鏡 VS  カメラ望遠レンズ そのメリット&デメリット


4枚程度のシンプルな構成で、5収差をコントロール出来る、(フォト・ビジュアル)望遠レンズ。

しかし、シャープネスを追求する為に、焦点距離に対して光学系全長はプラス20%程度と長くなるデメリットがあります。一方、カメラ望遠レンズは、多くのレンズ(フローライト・SDレンズも複数)を使用し、テレフォトタイプで設計することにより、光学系全長はマイナス20%程度とコンパクトになるメリットがあります。(機動性追求)

望遠レンズ (フォト・ビジュアル) の基礎条件を考察すると・・

1・焦点距離、300〜500mm 前後。
2・明るさ、F 5.6 以下 (レデューサ挿入後、F 4.0 以下)
3・口径、3〜4インチ 前後。 (75〜105mm 前後)
4・中心スポット、10ミクロン以下。(ストレール比・80%以上) 
5・周辺スポット、30ミクロン以下。(Φ40mm)
etc

フローライト 望遠レンズ 




7.過修正 OR 負修正 の調整


対物レンズは、球面収差を最適値に合わせるのが基本ですが、プリズム、フラットナー、レデューサ、アイピース、肉眼の球面収差、温度変化 etc、様々な要因を考慮して、過修正 or負修正に調整することもあります。

良質な天頂ミラーが少ない昔は、天頂プリズム使用前提での、球面収差補正をした製品がありました。
(ツアイス APQ 等)




8.望遠鏡、眼視解像力の考察。


まず、以下の基本法則があります。

・ 点光源(恒星) の解像力 ≒ 分解能
○ 面積光源(星雲) の解像力 ≒ (分解能 * 単位面積光度の平方根)


標準肉眼でのエアリーディスク径 ≒ 120秒前後。分解能は、瞳径2mm以上の場合、倍率に比例。よって、理想的な気流(エアリーディスク直径・1秒角) かつ理想的な暗い空( SQM・21以上) の場合、眼視限界解像力を出す最小口径、及び倍率は

点光源の恒星 ≒ 250mm (120倍以上)
面積光源の星雲 ≒ 800mm (120倍前後)

となります。面積光源(星雲)は、口径に比例して解像力が向上します (瞳径 7mm以下)




9.望遠鏡、写真解像力の考察。


望遠鏡のカメラ撮像での極限等級は、スポット径が同一の場合、焦点距離が
1.6倍で1等級向上します。

理論的エアリーディスク ≒ スポット径でシミュレーションすると・・

75/600mm F 8.0  → 最小スポット直径、10 ミクロン ≒  3秒角 
150/1200mm F 8.0 → 最小スポット直径、10 ミクロン ≒  1.5秒角 

レンズ光学系以外の要素は、撮像素子の密度、ガイドの精度、気流(シーイング)、ピント調整 
etc があり、
理論写真解像力を、実際の撮影 (長時間露出)で達成する為には、高いハードルがあります。




10.アポクロマート屈折望遠鏡、一覧


口径 mm 費用対効果 ※ 時間対効果 
200
150
120〜130
100
70〜80


※ 時間対効果 / 費用 ≒ 費用対効果



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