大口径 望遠鏡テスト
1.大口径望遠鏡の現状 天文台等の大口径望遠鏡(概ね口径・60センチ以上)は、日本国内で約 50個所程度とかなりの数に上ります。しかしながら、きちんと調整されて口径分の性能を発揮している施設はほとんどありません。その理由として 1・ そもそも、日本上空を流れる気流※1 の擾乱で、明瞭な星像・・エアリーディスク・リングが形成されない。 2・ 良気流に恵まれても、実効光学性能が低い (収差※2、鏡面の歪み、ドーム内気流、温度順応他) 等が挙げられます。気流(シンチレーション・シーイング)の擾乱における影響は、より像を拡大する大口径になる程大きくなり、安定する頻度は、極めて僅かです。 ※1、気流の予測には、高層天気図が有効です。300hpa・500hpaにおいて、ジェット気流から離れ、風速が弱い時は良シーイング(シンチレーション)が期待できます。目安として、300hpaでの風速が約40ノット(細い羽根4本)、500hpaでの風速が約20ノット位で、スケール 7/10 前後です。(参考) 高層天気図00h ・ 12h ※2、大口径アクロマート屈折の場合、口径12cm超でも、球面収差の為それ以上の分解能は望めません。 (参考) アポクロマート〜アクロ 比較 |
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2.シーイング調査のデータ シーイングの定義は、肥大した星像(エアリーディスク)の半径とされます。 比較的気流の落ち着いた、広島〜岡山においての平均的なエアリーディスク直径は、約 2秒とされますので、その半径 ≒ シーイングは1秒ということになります。即ち、口径 120mm の分解能相当値です。(故に、120mmクラスの屈折望遠鏡が、費用対効果、時間対効果 が最も高い光学系とされている) 実際の測定値においても、平均的な数値は 1秒前後、最も安定した時は0.5秒未満になる時もあるようです。季節変化は意外に少なく、冬季においても条件に恵まれれば1秒前後が期待できるようです。 ハワイやチリなどの海外観測地においては、良シーイングに恵まれると、0.4秒程度の数値になるようです。 最小値はハワイ・すばる天文台における、0.2秒程度 (エアリーディスク直径 0.4秒、口径600mmの分解能相当)です。 (参考) 広島大学サイト ・ 東京大学サイト ・ すばる天文台 ![]() シーイングスケール シーイングの分布は、対数正規分布に近似しています。エアリーディスク直径 の平均値(中間値)、 約 2 秒 の分布、及び 確率度数(頻度) のシミュレーションです。(標準偏差、約 0.5) 気流対応 ・ 概算表 (西日本・夏期) シーイング・計算 etc
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3.写真分解能の実測データ シーイング(気流)の調査において、重星等の実際の撮影データもあります。 国立天文台・岡山 (口径 188cm) において、気流の安定した夜での、ξUMa のシーイング測定値は0.8秒角のデータが残されています。即ち星像(エアリーディスク直径) は、1.6秒角程度となります。150mm対物と同等サイズの星像となっています。 岡山天体物理観測所 口径 188cm のエアリーディスク直径の理論値は、0.13秒前後ですので、理論性能の12倍ほど星像が肥大していることになります。 すばる望遠鏡に関しても、日本天文学会2008年会において、ハッブル望遠鏡の1/20の分解能 (約 12cm相当) と報告されています。 (参考) 日本天文学会・発表資料 |
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4.眼視での分解能テスト ストレールレシオ80%以上になれば、理論的無収差に近似した理想的な星像になるとされます。 こと座−ε2星 、150mm対物での星像です。 ![]() 画像ソフト ストレールレシオが、50%を大きく下回ると、エアリーディスクとジフラクションリングが融合し、星像が2倍以上に肥大します。日本国内の大口径望遠鏡(概ね口径・30センチ以上)において、気流の擾乱の為に、エアリーディスクとジフラクションリングが形成されることは、まずありません。(中央遮蔽のある光学系では、特に困難) 良シーイング時(1秒以下)における、実質的な分解能(星像の直径)も、150mm対物とほぼ同等(半径0.8秒角程度)の場合が多いようです。 |
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5.眼視の分解能テスト(実測) 西日本での公開天文台での眼視・実測値。 1mクラスでのテスト平均→ こと座−ε2星、月クレーター etc スケール 7/10 程度で、口径12センチとほぼ同等の分解能。(500〜1000倍) 望遠鏡・最良システムの考察 |
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6.写真の極限等級・分解能テスト 実視での分解能は、そのまま写真での分解能及び写真極限等級に影響します。バックグラウンドとのS/N比での関係から、星像の直径が1秒角程度の場合、写真極限等級が夜空の平均的な明るさである22等級/平方秒を超えることは難しくなります。 現実には、国内での写真の場合、長時間露光での星像の直径は口径に関わらず、2〜3秒程度以上の大きさになりますので、特殊なフィルターや画像処理等をしない場合は、口径の大小に関わらず写真極限等級は、20等級前後で頭打ちとなります。 (例) 10センチ小口径での撮像例 KYOEI大阪 サイトの中でのM101星雲。小口径にも関わらず、写真極限等級・面積体の分解能はメータークラスの大口径望遠鏡と大差無い事が判明します。 |
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7.大口径望遠鏡のメリット等 以上により、眼視における分解能(重星)、そして写真における極限等級・分解能に関しては、小口径と大差ないことが判別します。大口径のメリットを挙げると、写真撮影の時間が短くて済むこと、そして眼視での極限等級に優れること等があります。 250mm 反射光学系 また以下のように、赤外光観測においては、大きなアドバンテージとなります。 |
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(備考) 大口径望遠鏡の観測装置について・・ 可視・赤外線望遠鏡での観測を分類すると 波長別では、可視光線 (400-800nm前後) と近赤外線 ( 800-2000nm) 手法別では、CCDカメラとスペクトル観測装置(分光器) となります。赤外線領域での分光観測の特色として、ダスト等による減衰が少ないこと、また深宇宙銀河等の赤方偏移対象の観測に適している等が挙げられます。また補間光学システムが稼動すれば、可視光線よりも高い分解能を得られます。 分解能は、波長の長さに反比例して低下するので、可視光線 (400-800nm) と近赤外光 (800-2000nm) の 全域で、分解能 0.5秒 を達成させる為には、口径 1メーターの望遠鏡が必要です。 国外の1級観測地では、口径 2メーター級の望遠鏡も有効です。 赤外光の観測装置は、可視光よりも大型の場合が多く、堅牢な架台・鏡筒が不可欠となります。 ○ 国内観測用望遠鏡 ・カテゴリー分類 (概略)
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