○ 公開天文台 ・ 定量分析等  (2017.0122)



1 ・ 望遠鏡 ・最適システムに関わる、基礎条件 (自然環境、等)


地上で使用する望遠鏡において、最も重要なのは、大気の擾乱 (気流・シーイング) です。


シーイングは、その発生部所を区分すると、おおよそ5つに区分されます。即ち、1・中高層のジェット気流。
2・低層の局地気流。 3・敷地、ドーム、ルーフ周辺の気流。 4・望遠鏡本体&ドーム内部の熱による気流。
5・人体の熱による気流。 ・・です。
 

真夏以外は、日本付近の上空・300hpa付近に強いジェット気流が流れることが多く、恒常的に悪気流が発生します。ジェット気流が北に移行する夏期間においても、局地的な悪気流が発生することがあります。


(参考) 高層天気図00h 12h







日本国内の場合、シーイング中の上 (シーイング 6)の気流状態で、星像ボケの直径が、約 2秒角と言われますが、この星像サイズは、口径 12cm前後の理論的エアリーディスク径と一致します。

日本での良好な気流・シーイング時の、調査統計データーは約 1秒。エアリーディスク径は、2秒角。即ち
口径 12〜13cmと同等です。極めて良好な時で、25cmの分解能相当の気流です。 ちなみに、
pickering
スケールの基準は、13cm(5インチ)です。
 

どんな大口径でも、その
 「2秒角基準」 から逃れることは困難で、口径が増すほどにエアリーディスクから光が溢れ、ジフラクションリングとエアリーディスクが肥大し融合して、星像は巨大化してしまいます。口径本来の理論分解能には遥かに及びません。


望遠鏡光学研究の第一人者、元・東北大学名誉教授、吉田正太郎氏は、
自著 「反射望遠鏡光学入門」 
http://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=912
においても、以下のように記述しています。

「大気の動揺によって星像のボケの直径が1″になる夜のことをシーイング1″といいます、これは日本ではかなりの良夜です。ところが
1″は、12cmあれば見分けられる角度です。」




国内では、広島大学等での研究データが公開されています。
 広島大学サイト

比較的気流の落ち着いた、広島〜岡山においてのエアリーディスク直径は、平均値(中間値)で、約 2秒強。
国立天文台・岡山、の2003年の調査データ(14夜・夏期中心)では、シーイング1秒以下の時間は約 30%、
平均シーイングは 約 1.2秒 という数値となっています。

また、国立天文台・岡山 (口径 188cm) において、気流の安定した夜での、ξUMa のシーイング測定値は0.8秒角のデータが残されています。即ち星像(エアリーディスク直径) は、倍の1.6秒角程度となります。口径15cm対物と同等サイズの星像となっています。

口径 188cm のエアリーディスク直径の理論値は、0.13秒前後ですので、理論性能の約 12倍、星像が肥大していることになります。 (参考)
 岡山天体物理観測所




(備考) 望遠鏡の口径・分解能と、シーイングスケール

やや良好な気流(シーイング6) に対応する分解能(約 1秒)は、口径約 12cm
* 程度に相当します。




シーイングスケール


※ 
William H. Pickering (1858-1938)  は、口径 5インチ (13cm) 屈折望遠鏡 を基準に、
シーイング・スケールを
考案しました。13cmのジフラクションリングが明瞭に見える気流状態は、およそ
6〜7 /10 程度となります。 
シーイング・計算 etc 


日本付近の気流では、このクラスの口径が、月惑星・重星観測で、最も分解能を出せるスペックとなります。


シーイングの分布は、対数正規分布に近似しています。エアリーディスク直径 の平均値(中間値)、
約 2 秒 の分布、及び 確率度数(頻度) のシミュレーションです。(標準偏差、約 0.5)

気流対応 ・ 概算表 (西日本・夏期)  


シーイング概算 ディスク直径 (秒) 分解能 (mm) 頻度 (%)
10 0.5 480 0.5
0.7 340
1.0 240 10
1.4 170 25
6 * 2.0  120 * 50
2.8 85 75
4.0 60 90
5.6 42 98
8.0 30 99.5
11.0 21 99.9





2 ・ 公開天文台に必要な要素とは?


研究用望遠鏡&天文台 と比較し、様々な要素で差異があります。


・設置環境 → 想定利用者の居住地 (都市部) から、比較的近いこと (交通至便)

・付随環境 → 望遠鏡以外の施設 (書籍・映像ライブラリー等)、飲食施設、宿泊施設 etc

・人的環境 → 運営スタッフの確保、運営 etc

・観望対象 → 星・星座全般、星雲星団彗星、月惑星、重星、太陽 etc

・観望環境 → 光害、悪気流 etc


・自然環境 → 山、高原、森、海 etc  





様々な諸環境、様々な観望対象、その大半を網羅する為には、複数の観望システム ≒ 望遠鏡システム
が必要となります。

大気の擾乱 (気流・シーイング) についても、敷地、ドーム、ルーフ周辺の気流。 望遠鏡本体&ドーム内部の熱による気流。 人体の熱による気流。 の要素が大きく影響します。
 

原則は、良気流の確率が少しでも大きい、フルオープン型の、スライディングが良好です。




清和天文台 (公式サイト) http://seiwabunraku.hinokuni-net.jp/tenmon/




3 ・観望に必要な、望遠鏡スペック等 (望遠鏡・最適システムの考察)



星・星座全般 → 肉眼&双眼鏡、スライディングルーフ etc 、フルオープン環境。

(小型) 星雲星団、彗星 → 大口径反射望遠鏡、35〜50 cm 前後が良好。※

月惑星、重星 → アポクロマート屈折望遠鏡、10〜15 cm 前後が良好。

太陽      →  専用 Hα フィルター付、 5 cm 前後が良好。 




※ 微光の星雲星団、彗星等の観望においては、光量が必要となります。光量と気流による擾乱のバランスを考慮すると、35〜50cm 前後の反射望遠鏡 (純ニュートン) が、良好となります。

純 ニュートン反射は、カセグレン系と比較して、一般に、分解能とコントラスト etc が良好です。

スライディングルーフ etc 、フルオープン環境では、温度順応時間も短く、より大口径の性能 (分解能)を
出しやすくなります。ドームは熱放射時間が長く、望遠鏡の性能を出すのは困難です。




以上の基礎条件を鑑みると、気流等の影響が少ない設置環境、機材 etc として

1・熱の溜まりやすいドームではなく、より外気に馴染むスライディングルーフが良好。
2・同じく、熱の溜まりが少ない広い芝生に囲まれている方がより良好。
3・望遠鏡は、10〜15cmのアポクロマート屈折+ 大口径 (35〜50cm) 反射+@、双方必要。
4・屈折は、2枚玉対物レンズ、操作性の良い中焦点 (F 8 〜9)。

・・等が考えられます。
 


望遠鏡・最適システムの考察







10〜13cm、アポクロマート望遠鏡を、そのまま木製ベランダに並べた場合、やや振動が気になります。
ピラーを、基礎に固定した方が、遥かに安定します。







○ 望遠鏡設置における、シーイング調査について・・


シーイングに関し

・高層気流(ジェット気流)
・中低層気流
・接地層気流
・人体の気流

要因は、4つに区分されます。


接地層の流れは、複雑で細かく、望遠鏡(ドーム)の位置を
1メーター移動するだけで、大きく変わることもあります。

ドームの改良で、大きく変わることもあります。

よって、(公共)望遠鏡設置は、専門家の検証を予め受け
完成後も、データ解析をする必要があります。




4 ・ 公開天文台の未来。


平成以降、公開天文台の大口径化は著しく、口径1m以上のものも珍しくありません。

一方、日本の悪気流に影響されて、極上の気流 (シーイング) でも、口径 ・ 25cmクラスの分解能を超えることは、稀となっています。現実のメーター級 ・大口径望遠鏡で見る星像は、
「ピンボケ星像」 に過ぎず、お世辞にも美しいとは言えません。


国内・最大級、口径 130cmを誇る、仙台市天文台。小石川台長は、以下の記述を残しています。

「さて、今までに何度となく
1.3m大型望遠鏡で土星観測にチャレンジしてきましたが、残念ながら観測条件に恵まれていません。どれくらいの撮影枚数となるのでしょうか。いつもボケた惑星写真ばかりです。もちろん土星と同じように月の写真もボケボケばかりです。」

(中略) 次の目標は夜間の月や土星、そして明け方の木星観測でした。 しかし、今までに1.3mの性能を発揮できるような気流状態に恵まれていません。」

仙台市天文台

http://www.sendai-astro.jp/observation/blog/2009/05/post-42.html




求めるべきは、大きく高価な望遠鏡ではなく、美しい星像を見せる(魅せる) 望遠鏡です。

一番大口径の望遠鏡ではなく、
シャープな望遠鏡 を複数揃えた、公開天文台。

更には、自由に使用可能な貸出し小口径望遠鏡を揃えた、個室 (ミニドーム・ミニルーフ etc) の設置。
公共天文台の未来は、より
 美しい星を楽しめる場所。 ・・ であるべきと考えます。


望遠鏡・光学性能の定量評価は、
可視光線における 平均解像度 (分解能) が、適切 と思われます。

日本付近の年平均気流 (seeing 5-6 /10)を考慮すると、年平均解像度 (分解能) が高い光学系は、
13〜15cm クラスの、高性能アポクロマートとなります。




(備考) ベランダ等用、10〜13 cm アポクロマート屈折望遠鏡、 設置状況


天文台等 ・名称 住所 設置状況 サイト
福岡県・青少年科学館 福岡県久留米市 タカハシ・FS−102 約 3 台
春日市・星の館 福岡県春日市 タカハシ・TSA−102 約 1台
佐賀市・星空学習館 佐賀県佐賀市 ビクセン・FL−102  約 5 台
佐賀県立・宇宙科学館 佐賀県武雄市 タカハシ・FS−102 約 5 台、
タカハシ・TOA−130 1台
長崎市・科学館 長崎県長崎市 タカハシ・FS−102 約 10 台



長崎市・科学館




天文ハウス・TOMITA

http://y-tomita.blog.so-net.ne.jp/2016-07-07




星空のまにまに





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