光学 関連メモ +




○ アクロマート用ガラスの特性


アクロマートレンズ用光学ガラス、BSL7(BK7)&TIM2(F2)

S−BSL7 の場合、まず硬度が570と硬く、消耗度も 94と小さいので、キズが付きにくくなっています。前面レンズに使っても安心です。耐酸性も1で安心です。特筆すべきは内部透過率の高さで、可視光 400-700nm間全域で99.7%以上(T10mm)ですので、光路の長い正立プリズム等での使用も安心です。熱膨張率も72(10-7/°C)と小さく、化学的耐久性も良好で、高級アポクロマートの相手玉としても使用出来、調達コストも廉価です(10p)。

一方、S−TIM2の場合、硬度が550、消耗度は 150、キズがやや付きやすくなっています。化学的耐久性もやや弱く、400nmでの透過率が94%と低下しています。調達コストも高くなっています(17p)。

ED・フローライトのアポクロマートレンズと比較し、アクロマートレンズは温度順応特性が良好です。




○ アポクロマート用ガラスの特性


高級アポクロマートレンズ用光学ガラスとして知られる、オハラ S−FPL53の場合、まず硬度が320と極めて軟らかく、磨耗度 451と極めて大きいことにより、容易にキズが付きやすくなっています。耐酸性は3ですので、空気中にあるだけでも劣化します。S−FPL51も同様の脆弱性があります。

保守管理のためには、丈夫なコーティングを素早く行ない、手が触れないようにする必要があります。また熱膨張率も145(10-7/°C)と大きくなっていますので、温度順応等にも注意が必要です。

屈折率の温度係数も一般ガラスと大きな差があります。調達コストは高いです(56p)




オハラ・光学ガラス


一方、蛍石・フローライト CaF2 は、スーパーEDレンズの普及前からレンズ材として使われてきました。
FPL 53が普及し始めたのは1990年代からですが、フローライトは1970年代から、カメラ用望遠レンズ(キャノン)、望遠鏡(タカハシ)等で量産されています。

硬度は極めて軟らかく、330程度、熱膨張率も約 190(10-7/°C)と大きくなっています。温度変化による収差、ピント変化等も大きく、温度順応の時間がかかります。(ちなみにパイレックスは熱膨張率28と小さい)またコーティングの熱にも弱く、ノーマルガラスとは別の特殊技術が要求されます。

また、FPL 53の光学特性との差異はごく僅かですので、フローライトと入れ替えても、多くが僅かにレンズ曲率の調整をするだけで事足ります。




○ アポクロマート用ガラスの特性 (相玉)


フローライト(蛍石・CaF2)&FPL53、FPL51(FK01/PK52A) 対物の相手レンズは、アッべ数が50前後のKF(クラウンフリント)〜LAK(ランタンクラウン)/ オハラ NSL〜LAL等がよく使われます。

LAK/LAL等の高屈折ガラスは、小さなF値でもより優れた収差補正の設計が可能です。

KF/NSLは物理的耐久性がやや弱く、逆にLAK/LALは化学的耐久性がやや弱い傾向です。また、1990年代前後は、KFカテゴリー付近のクルツフリント、特にKZF5がよく使われました。 
レンズ設計データ




ショット・光学ガラス



○ 望遠鏡用プリズムの特性


屈折望遠鏡はその構造上、天頂付近の対象を観測する場合は、その姿勢を楽にする為に長い間天頂プリズムを使用してきました。

Fの長いアクロマートの場合は、ピント位置の許容範囲が広い為に、プリズムでも像の変化(球面収差の変化)は余り問題にならなかったものの、望遠鏡メーカーからFの短い高性能アポクロマートが発売、また光路長の長い正立プリズム等が発売されるようになってから、プリズムによる像の悪化が指摘されるようになりました。

光路長が長ければその分球面収差が増加します。光路長100mmでアクロマートとほぼ同じ位の球面収差補正となり、青ハロも発生します。高精度ミラーを使用すれば球面収差の悪化はありません、ただシーイングの悪い時のミラー使用は、反射光の為にプリズムよりも影響を受けます(ミラー自体の精度もプリズムより高い必要があります。よって、31.7mmサイズに関しては条件に応じてプリズム/ミラーを選択したほうが良いようです)

31.7mm・90度正立天頂プリズム(光路長・約 40mm)の場合、102mm130倍では、直視と比較すると細部の描写や色表現(青ハロ他)で差が出ます(-4p〜)。31.7mm天頂プリズム(光路長・約 30mm)の場合は、直視に近い画質です(-2p〜)。


プリズム使用を前提とした設計 
も可能です。 下の作例の場合、プリズムを使用すると、CdeF 4線がエアリーディスク中心付近に強く集光して、月惑星用アポクロマートとなります。


100 /800 mm  2枚玉・蛍石アポクロマート  プリズム無し  
100mm 蛍石アポクロマート





100 /800 mm   2枚玉・蛍石アポクロマート  プリズム・光路長 30mm (BK7 )









○ 光学製品を作る為の、ガラスの最小種類数は?


光学ガラスは、大手光学ガラスメーカー (ショット・オハラ etc) は、それぞれ100種類以上を揃えています。
しかしながら、通常の望遠鏡 ・望遠レンズ・双眼鏡 ・接眼レンズ ・補正レンズ ・プリズム等 は、僅か 4種類のガラス (フローライト含む) で構成することが可能です。

ショット他 (オハラ) の場合

BK7    (BSL 7)
BAK4   (BAL 14)
F2      (TIM 2) 
フローライト  (FPL 53)

必要最低限の性能で良ければ2種類、 即ち BK7(BSL7)と、F2(TIM2) のみで可能です。







○ 光学ガラスの小売価格 etc


比較的安価な、アクロマート用光学ガラス、その調達コストは・・

調達コストを大まかに区分すると、材料費+加工費(直接人件費等)+その他間接費等、となります。
個人で、BSL7(BK7)を1個発注した場合、いくつかの業者の見積り額を平均すると、口径 80mm・厚み15mm、平行平面精度が窓ガラス程度の場合、平均すると概算で以下の金額と推測されます。

材料費 ≒ 5,000円
加工費 ≒ 1,000円
間接費 ≒ 1,000円    計 6,000円

TIM2(F2)ですと、材料費は5割位UPします(+2,000円) 

ガラス1組合計で、調達コスト 15,000円前後、小売価格は 20,000円前後です。


以上、ロッド 100−1,000個単位で中国等に発注の場合は、ケタ違いに安くなると思われます。

また、一般の青板ガラスの小売価格は、口径80mm・厚み15mmで、加工費等込みで
2,000円前後と安価です。






○ コーティングの特性(単層コート)


光学ガラスの酸化やキズ防止、そして光の透過率向上の為に、ノーマルレンズにおいても全面コーティングは不可欠です。2枚玉対物レンズでしたら、単層コートで充分な効果があります。

BK7等の材質の場合、コーティング無しの場合1面当たり、400-700nm平均、約 4%の反射率となりますので、トータルの透過率は約 85%となります。単層コートの場合は約1.5%、F2の場合は約1%と減少しますので、4面全面コートした場合、透過率は約 95%と10%の増加となります。スーパーマルチコートですと 99%程度まで向上します。ただしガラス自体の不透過率も別途1%程度はあります。

コーティングによる減反射≒透過率向上の原理は、コート面からの反射波面とレンズ表面からの反射波面との相殺的な干渉が起こるようにすることです。互いの反射波面の位相
に180度の差異があり、強度が同じであれば、反射が防止出来ます。単層コートは通常、コート膜の厚みを1/4λにします。

単層コーティングの材料として広く使われるのは、フッ化マグネシウムMgF2で、マゼンタコート(反射光は青紫)と呼ばれるものがそうです。コーティング膜の蒸着は、真空の釜を使います。(参考) blog

単層コーティングの利点は、工程が少ないために熱によるレンズの破損が少ない、近赤外光域での透過率が比較的良好、等があります。




○ コーティングの特性(マルチコート)


レンズ枚数の多いアイピースやカメラレンズにおいては、単層コートですと光量損失及び迷光の増加となり、像質を落とすことになります。よって多層膜(マルチ)コーティングの必要性があります。

現在主流の3層マルチコートは、フッ化マグネシウムMgF2に加え、ZrO2、Al2O3等を加えたもので、可視光域において満遍なく干渉の効果を発揮しています。よって400-700nm平均で、実測の透過率は 99.5%前後と、単層コートよりも良好です。但し近赤外光域での透過率は、単層コーティングに劣るものがあります。

5〜10層程度のスーパーマルチコートの場合、実測透過率 99.8%程度のものもあります。ただしガラス自体の不透過率も別途1%程度はあります。高屈折ガラスは透過率が減少しがちです。


メモ帳 others


TOP−PAGE