有人宇宙開発の終焉
宇宙科学 etc 日記 (1)有人宇宙開発の意義とは? 旧ソビエトで初の有人宇宙飛行が成功したのは 1961年、即ち 2011年で、50周年を迎えます。 50年間の様々な有人宇宙飛行は、日本で確認されたものは全て大気圏内(低軌道、高度 1500km以内 )※1 のもので 、50年間ほとんど発展の無い、実質的に無駄なものに終わりました。有人では低軌道しか活動できなかった理由は、強力な 宇宙放射線 による人体の影響が大きいことにあります。 50年前に存在した、SF映画的な宇宙活動 (惑星間有人飛行、スペースコロニーetc) は技術的に儚い夢と終わり、現在の技術では、人類は地球の大気圏内でしか活動出来ないことが判りました。※2 2011年現在の価値判断で、低軌道の有人宇宙開発の意義を考えると、 ・教育的価値 ・無重力研究等 が相当すると思われます。しかし、低軌道〜高度 300km前後の、大気圏内を回るだけのISS(国際宇宙ステーション)のみが唯一の有人宇宙船である現在、その教育的価値には疑問符が付けられています。更に飛行士自体が中高年のみで、児童・学生の興味を呼ぶ対象になり難い状態です。 また、無重力研究等においても、50年間芳しい成果は無く、(研究当初は、癌 etc 難病の特効薬生成の可能性を云われていたが、殆ど無駄となりました)。日米欧露で合計、100兆円程度に達するだろう膨大な開発・維持費用は、原発同様、Mグループの失業対策的 「公共宇宙工事」 に該当するものでした。 宇宙開発で重要なものは、先ず気象衛星、その他防災衛星、そして放送・通信(GPS)、監視衛星等、科学(防災)、産業等に関わるもので、無人・低コストで済むものです。(はやぶさ等の探査衛星の科学的意義についても、今後詳しい検証が必要でしょう) 故に、有人宇宙開発の意義は無い、と断定せざるを得ないのが、2011年現在の現実です。 |
(2) 現状の有人宇宙開発 現在、日本も参加しているISS(国際宇宙ステーション)、日本が負担しているコストは、約1兆円に及ぶ膨大なもの。しかし50年前と同じく低軌道〜高度 300kmの大気圏内を回るのみで、経済的な費用対効果は極めて低く、科学的・教育的価値にも疑問符が付けられています。 元々、国際協力プロジェクトであるISS計画、米国の都合で平成27年(2015年)迄という当初の計画は反古にし、2020年まで計画延長という提案を、日本他に強要したものです。日本等の産業振興などとの口実も実効は不透明で、本来必要な、はやぶさ等の科学衛星プロジェクトが圧迫されました。 一方、2011年9月、ロシアのソユーズの不調で、米航空宇宙局(NASA)は、国際宇宙ステーション(ISS)に食料や燃料を輸送するロシアの無人宇宙貨物船プログレスの打ち上げが先月失敗したのを受け、原因が解明されなかった場合に備え、ISSの無人化計画に着手したことを明らかにしました。 (備考) ロイター http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-23065020110907 即ち、米航空宇宙局(NASA)は、現ロシアの有人宇宙飛行システムに大きく遅れた状況で、高度 300kmのISSに、自力で人や物資を運ぶことが出来ず、その存在価値にも疑問符が付けられています ※3 |
(3) 宇宙放射線対策は無効なのか? 地球の大気圏外には、太陽等の天体から放たれる高エネルギーの放射線、即ちがエックス線・ガンマ線等の電磁波、電子、陽子、中性子、その他高エネルギー粒子線等が充満しています。ただ地球の周辺 (高度 1,500〜30,000km程度)には、バンアレン帯と呼ばれる磁気帯があり、その内側(低軌道、概ね高度 1,500km以内)に降る放射線は、かなり少なくなっています。 大気圏外(磁気圏および磁気圏外)には、強度の放射線が充満しており、特にXクラスの大規模 太陽フレアの発生時には、シーベルト単位の、致死量の宇宙放射線 ※4 が見られます。 2001年〜2002年のJAXA・探査衛星つばさ のデータによると、シールド2mm厚で、約 2000 Gy(Sv)/574day、という膨大な量の放射線量を、磁気圏および磁気圏外(静止トランスファー軌道)で被曝しています。※5 致死量の400〜1000倍という、膨大な放射線量となります。(低軌道比約 3000倍) (備考)文部科学省/JAXA http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/gijiroku/h17/suishin01/004.pdf 有人で、バンアレン帯の外側、即ち静止軌道〜惑星軌道間に出る為には、致死量の宇宙放射線から人体を守るべく、厚い遮蔽シールドが必要です。様々な性質の放射線を1/100程度に減衰させる為には、厚さ 10cm程度の鉛、100cm程度の水、の2種類が必要です。ただ、放射線が遮蔽物質と衝突すると、2次放射線 が発生し、遮蔽体自体が放射性物質となる為に、遮蔽シールドと人体の距離がかなり必要とされます。即ち、宇宙船の質量が桁違いに増加します。 (備考) JAXA http://edu.jaxa.jp/seeds/pdf/2_radiation.pdf 現状の宇宙服は、アルミ箔を纏ったような構造で、高エネルギーの放射線を遮蔽する機能はありません。 エックス線を照射するとほとんど透過します。宇宙船も同様です。※6 以上を鑑みれば、有人で大気圏外(磁気圏外)に出るのは不可能に近いと言わざるを得ず。事実、2011年現在も、人類は、高度僅か 300km程度の大気圏に留まっています。 ![]() 宇宙天気情報センター |
(4) 宇宙開発の、あるべき指針とは? 巨大地震、台風豪雨、そして原子力発電所事故 etc、2011年現在の日本は、常に巨大自然災害と巨大人的災害の危機に晒されていることが判りました。そして、その圧倒的な脅威に対し、今現在対策できることが余りにも少ないことも判りました。 また、日本政府の財政は、既に破産状態であり(政府、及び地方、特殊法人の債務は、GDPの約2倍の1000兆円と、主要国中最下位) 今後は、より少ないコストで最大の効果を目指した(費用対効果の優れた)宇宙開発を運営していくことが必要です。 以上を鑑みると、日本の宇宙開発の指針(科学分野)は、以下が適切と思われます。 @小型衛星・小型〜中型ロケット全般 低コスト宇宙開発の為に、小型衛星・小型〜中型ロケットが必要。よって共通システムでコストを削減した小型システム衛星の開発、中型固体ロケットシステム(イプシロン)※7 、他の開発・改良が必要。 A地球観測衛星(気象衛星)、防災衛星等 国民の生命財産保持の為に、先ず気象衛星システム(ひまわり他)の拡充、その他、地球観測衛星を拡充し、 国内外の災害予測、監視、地球環境保全等への対処のため、測位衛星、降水レーダ衛星等、地球観測衛星網のを整備し、利用拡大の為のシステム整備が必要。 B 太陽観測衛星 太陽は、地球環境に最も大きな影響を与える天体であり、様々な衛星観測システムが必要。特に、原発事故に繋がりかねない大規模太陽フレア等の予報システム※8、及び地球温暖化、大規模気候変動等の予報システムの拡充が必要。 C 惑星探査衛星 世界トップレベルの成果を挙げている小惑星探査について、「はやぶさ」※7 の微小重力天体からのサンプルリターン技術を発展させ、また金星・火星等の重力天体(惑星)への探査衛星システムの改良が必要。 D 月探査衛星 月は地球に最も近い重力天体であり、話題性の高い対象。優れた無人システムが必要。 大気の無い重力天体への軟着陸、重力天体からの帰還(サンプルリターン)技術、月探査ロボット技術はどれも難易度が高く、現在確立した技術を有する国は無く、実用化出来れば世界トップレベルの成果となる ※9。 (備考) 宇宙開発戦略本部 ・ 宇宙開発戦略本部2 はやぶさ、現物大模型 (ISAS 相模原) ![]() M3sUロケット (ISAS 相模原) ![]() |
詳細解説 ※1 1968年〜より数年間に、米国のアポロ計画にて、9度に渡り人類は月に行ったとされるが、物理的データー (宇宙放射線、リターンの軌道要素、画像 等)が不自然で、第三国の日本での検証論文が極めて少なく、 有人か無人か?は確認が取れないものとなっている。 また、2004年に米国NASAにて公開された有人月探査プログラム 「コンステレーション計画」も、6年後の2010年に、技術的問題から凍結されている。(一方、NASAの予算は、2010年度のベースに比べ、2011年度から2015年度までの5年間で、60億ドルの増額となって、総額1000億ドルに達している。) NASAは、有人月探査計画を凍結することで基礎技術開発などに注力する方針と発表した。大学や研究機関、国内外の産業界などとの民間協力によりコストを削減し、新たな技術開発やテストプログラムを実施するとしている。 (備考) アストロアーツ http://www.astroarts.co.jp ※2 SF映画アニメ・小説等の世界では、将来地球に住めなくなった時に、スペースコロニーetcに居住が可能とするが、酸素、水、食料、エネルギー等の完全自給自足技術は、地球の実験施設でも未だ確認されておらず、 まさにSF(スペースファンタジー)の世界に過ぎない。 また、コストも膨大な金額となり、1万人が自給自足に近い生活を低軌道上で行う場合、年間、約 500兆円弱の金額がかかるとされている。これは、日本の国家予算の5年分以上に匹敵する金額である。なお、ISS(国際宇宙ステーション)のコストは、日本負担分のみで、約 1兆円に及ぶ膨大なもの。 (全費用は、10兆円超。世界史上・最大費用のプロジェクト) ※3 米航空宇宙局(NASA)が、現ロシアの有人宇宙飛行システムに50年以上遅れた状況で、高度 300kmの ISSに、自力で人や物資を運ぶことが出来ない理由については明らかにされていない。また、ISS計画に携わる日本のJAXAも、その理由及び今後の計画変更等については詳細に公表していない。 米国の有人宇宙飛行システムの開発は難航しており、ISS稼動中に完成する見込みは立っていない。 ※4 Xクラスの致死量の大規模フレア(Sv/Gy単位)は、太陽活動期において平均、年20回前後発生。 (備考) JAXA http://airex.tksc.jaxa.jp/dr/prc/japan/contents/AA0063585008/63585008.pdf (備考) ISAS/JAXA http://surc.isas.ac.jp/SpaceUtilizRes/SUR23_Proceedings/093_Terasawa.pdf 太陽フレアが発生すると、エックス線(X線) ガンマ線から紫外線や可視光線、電波にいたるまでのさまざまな波長域で増光が見られる。 フレアに伴い莫大なプラズマが惑星間空間に放出されることがある。〜また太陽フレアにより磁気嵐やオーロラ現象が発生したり、地球近傍の衛星や無線通信に悪影響 を与えることがしばしばあり、地球磁気圏外では、放射線や高エネルギー粒子が宇宙飛行士の致死量を超えることもある。 (備考) 国立天文台 (衛星ひので) http://hinode.nao.ac.jp/news/070321Flare 日本国内では、宇宙天気情報センター が宇宙放射線の定量データを公開しているが、太陽活動が極大期(2011〜2014年頃) には、致死量の大規模フレア(Xクラス)が毎週〜毎月のように発生する。特にX線・γ線等の電磁波は、数分でそれに達する。(備考) NOAA http://www.swpc.noaa.gov/rt_plots/xray_5m.html 高エネルギー宇宙線の研究は、宇宙線発見以来の課題であるにもかかわらず、約1世紀をへた現在でもまだ十分に解明されたとはいえない状況。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験モジュール曝露部(JEM/EF)に搭載を計画している、CALET(Calorimetric Electron Telescope)では、TeV領域までの電子、ガンマ線観測と1000TeV領域に及ぶ陽子、原子核観測により、宇宙線の加速、伝播を総合的に解明することが可能。 (備考) ISAS/JAXA http://surc.isas.ac.jp/SpaceUtilizRes/SUR24_Proceedings/M-21%20torii.pdf また、強い放射線は、カラーフィルムを感光、変色させる。(備考) コダック 〜新型のX線検査システム http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/motion/support/technical/xray.shtml >高エネルギービーム (幅1cm/出力100-300 mR)は、未現像の写真フィルムにカブリを引き起こします。 (注 300 mR ≒ 0.003Sv ) ※5 静止軌道の放射線量は、静止トランスファー軌道の約 1/10 (年 100 Sv/Gy) (備考) JAXA http://www.jaxa.jp/press/nasda/2003/tsubasa_20030924_j.html 低軌道の約 300倍の放射線量、磁気圏内は約 3000倍。 静止衛星の場合、設計基準の多くは 1000 Sv/Gy 単位。(致死量の200〜500倍) (備考) NEC http://www.nec.co.jp/techrep/ja/journal/g11/n01/110123.html 上記設計基準で、2003年10月の大型太陽フレア発生時は、多くの衛星が放射線で破損。 (備考) ISAS/JAXA http://www.isas.ac.jp/j/forefront/2008/obara/index.shtml ※6 通常の宇宙船、及び宇宙服は、主に薄いアルミで形成され、宇宙放射線 (エックス線・ガンマ線等の電磁波、電子、陽子、中性子、その他高エネルギー粒子線)の遮蔽能力はほとんど無い(α線・β線の遮蔽は可能)。 故に、レントゲンのエックス線を照射すると、ほぼ完全に透過する。 (備考) JAXA http://iss.jaxa.jp/iss_faq/env/env_003.html http://iss.jaxa.jp/iss_faq/env/env_006.html http://iss.jaxa.jp/iss_faq/go_space/step_1.html#q5 |
※7 2010年、地球へのリターンが成功した、はやぶさの打上げロケットは、旧 ISASの固体ロケット・M5ロケット (LEO ≒ 1800 kg)で、現在開発中のイプシロン・ロケットは、M5ロケットをベースにした固体ロケット。 (LEO ≒ 1200 kg) 固体ロケット初の惑星軌道投入(すいせい他)、大気圏再突入カプセル(EXPRESS)等は、 M3sUロケット。(LEO ≒ 770 kg) 近年は、NASAや、ドイツのX線観測衛星ROSAT 等、大型観測衛星等の数トンクラスの部品が、燃え尽きることなく地上に落下する事故が頻発し、衛星の大型化が問題となっている。(備考)文部科学省 http://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/satellite/index.htm 更に問題なのは、ISS(国際宇宙ステーション)の廃棄問題で、数100トンの機体の多くが地上に落下する見込みで、その具体的対策は、NASA、JAXA でも公開していない。 ※8 大規模な太陽フレアが発生すると、高エネルギー粒子等により生成された電気エネルギーは、電離層に電流を流し、強い誘導電流が地上の送電線を流れ、電気機器、電力施設が破壊される等、大きな被害となる。 原子力発電所における電源喪失は、極めて重大な問題で、長時間のそれはメルトダウンの可能性を生む。但し高エネルギー粒子等は、太陽フレア発生から地球到着迄2〜3日の猶予があるので、対策は可能である。 過去、1859年に極めて強い太陽フレアが発生し、アメリカで多くの送電線と電気機器が破壊された、近年においても、1989年にカナダで大規模停電が発生。 ※9 致死量の宇宙放射線が充満する中軌道以遠(月惑星)は、現在の技術では、有人探査は極めて困難である。 一次放射線のみならず、ニ次放射線対策は、現在の技術では困難。(福島原子力発電所の事故において、 有効な外部放射線遮蔽等の技術が存在しないことで明らか、なお宇宙船居住区周りの強力な磁界発生システムを開発し、宇宙放射線遮蔽が出来れば可能ではある。) よって、現状の段階では、優れた月惑星・無人探査技術の開発・改良が急務。 (備考) JAXA/文部科学省 http://edu.jaxa.jp/seeds/pdf/2_radiation.pdf http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/gijiroku/h17/suishin01/004.pdf |