対物 レンズ設計、はじめ




1. 対物レンズ設計のはじめ


屈折望遠鏡の対物レンズ設計において、
もっとも重要な目標は、球面収差の補正 でしょう。

ガラスを光が透過する際に、波長ごと(CdeFgの5線他)の屈折率の違いが焦点距離の差異となり、像のボケ≒球面収差を生み出します。視野周辺においては、コマ収差、非点収差、湾曲収差等がボケを生じさせます。それらの収差を補正する為に、異なる特性の凹凸それぞれの光学ガラスレンズを組み合わせます。

ガラスの特性として、屈折率n、アッベ数v 等がありますが、凹凸双方のレンズの焦点距離 fより、条件式
f1/f2 = -v2/v1 と、レンズ合成公式等を応用することにより、対物レンズの設計が可能です。




2.光学ガラスについて 


光学ガラスとは、均一な一定特性をもつ透明なガラスのことで、珪酸SiO2 を主成分としています。一般にアッベ数v が50以上(横軸)のものをクラウンガラス、50以下のものをフリントガラスと呼びます。ガラスの屈折率は、1.5〜1.9程度です(縦軸)

通常のアクロマートレンズの場合、前面の凸レンズにクラウンガラス(BK7等)、後面の凹レンズにフリントガラス(F2等)を使います。BK7はレンズ以外にもプリズム等にも良く使われるガラスで、安価で物理的、化学的特性にも強いために重宝されます。3枚玉スーパーアポクロマートの相玉としても使われます。

光学ガラス製造メーカーは、独ショット、日本のオハラ 等がメジャーです。(BK7等はショット社の商品名です)




ショット・光学ガラス



3. 対物レンズ設計値の表示


2枚玉対物レンズの場合、ガラス面は4面ありますので、設計値は、それぞれの曲率、ガラスの種類・中心厚、2枚玉間のスペースで表示します。

アクロマート の場合、以下のような表示をします。(80mmF8)

r1 = 315mm/9mm/BSL7 (BK7)
r2 = -280mm/0.0mm/AIR
r3 = -280mm/7mm/TIM2 (F2)
r4 = -2100mm/630mm/AIR


AIR というのは、エアスペースの意味です。





r の数値が小さい程、曲率はキツく、より厚いガラス材が必要になります。アクロマートレンズは、一般に曲率が緩いので、ガラス材も薄いもので済みます。F値が大きいレンズも同様です。




4. 2枚玉 フランホーフェル型 対物レンズの設計


広義のフランホーフェル型(リトロー型)の2枚玉対物レンズの設計式は、天文台や市販品でも多く使われています。r1−r4の4面うち、r2−r3 の曲率を同一にすることにより、設計・製造が易しくなります。但し、設計自由度が制限されますので、コマ収差を除去することは困難です。

まずは、基礎データを調べます。即ち、前面の凸レンズ・後面の凹レンズのそれぞれの屈折率nとアッベ数vです。一般的なアクロマートの場合、前面はBK7(BSL7)、後面はF2(TIM2)が主です。基準はd線とします。

BK7   nd 1.5163   vd 64.15  凸レンズ   (f1,n1,v1)
F2     nd 1.6200   vd 36.26  凹レンズ   (f2,n2,v2)

レンズ全体の焦点距離は f


(リトロー公式)

f1 = ((v1-v2)xf)/v1
f2 = ((v1-v2)xf/v2

r1 = 2(n1-1)xf1
r2 = -r1 
r3 = r2 
r4 = 1/(((1/r3)-(1/((n2-1)xf2))))

・・・ 単位 ミリ、となります。





5. 対物レンズ設計 においての基本指針

対物レンズの設計は、使用目的や光学ガラスの特性、そしてガラス入手の難易度等で変わります。


眼視使用の場合、基本は、重星・月惑星等でしたら高倍率が必要なので、高い分解能を得られやすい長焦点のもの、星雲星団・彗星等の場合、明るい低倍率の得られる短焦点のもの、という大まかな区分となります。

EDガラス、或いはフローライトは物理的・化学的特性が弱く、密着型短焦点対物の場合は、球面収差が増加しやすくなります。アクロマート用ガラスは、物理的・化学的特性が強く安価で入手しやすいですが、全般に球面収差が大きく、高い分解能を求める際はそれを補正する設計が必要となります。

F8クラスの密着式対物レンズでしたら、アクロマート・アポクロマート共に、球面収差とコマ収差の補正のみでほぼ事足りますが、完全分離式、或いはF4クラス以下になりますと、視野周辺の非点・湾曲・歪曲の各収差の総合的な収差補正が必要となり、設計の難易度が増加します。




○ レンズ設計の流れ


1.レンズ系の基本仕様 (口径 ・焦点距離(F値) ・解像度 etc)

2.データーベースより修正改良 (変化表) → 収差の最適化

3.球面収差図、スポット図等で、基本性能の確認

4.公差解析等、光学総合性能の評価・テスト




○ 8 cm 自作研磨、新型 ・アクロマートレンズ








(用語解説)


アッベ数 → 一定の波長間における屈折率の差のこと。部分分散比とも呼ばれる。
レンズ合成公式 → f = ((f1*f2)/(f1+f2-d))



新型アクロマート設計


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