太陽を掠める 彗星群 (改訂版)
○ 1680年、太陽を掠める大彗星 1600年代後半、ニュートンやハレーの功績で、彗星の軌道を、幾何数学的に計算出来るようになりました。 その黎明期に出現した、太陽を掠める大彗星、C/1680 V1は、1680年11月にキルヒによって発見されました。太陽に接近すると共に急速に増光、白昼に肉眼で観察出来た様子です。近日点通過後は長いテイルが伸び、70度程に達したといいます。その壮大な光景は、沢山の絵画、版画等で残されています。 およそ200年後の1800年代後半、精密な軌道計算が出来るようになった頃、クロイツは、過去の太陽を掠める彗星群の大半が、近似した軌道要素を持つ彗星群、即ち「クロイツ群」であることを発表しました。 同時に、C/1680 V1 は、大多数のクロイツ群とは別の彗星群であることが判明しました。 ○ クロイツ群の軌道要素 時は過ぎ、現代のコンピュータ時代。過去の太陽を掠める大彗星〜太陽探査機 SOHO により発見された1000個超の小彗星クロイツ群含め、より精密な軌道要素が判明するようになりました。 近代、1800年以降に発見されたクロイツ群で、長い尾を引く大彗星に成長したのは、C/1843 D1、C/1882 R1 (Great September Comet)、そして C/1965 S1 池谷・関彗星 等があります。3彗星共に、昼間に肉眼で見えたとのことです。 代表的なクロイツ群の、池谷・関彗星の軌道要素 近日点距離 (q ) 0.007 AU 軌道傾斜角 (i ) 141.8 度 近日点引数 (ω) 69.0 度 昇交点黄経 (Ω) 346.9 度 は、その他大多数のクロイツ群と、ほぼ同様の数値です。 クロイツ群の源流は、紀元前371年の伝説の大彗星(核直径 100km前後?)で、そこから分岐した可能性が高いとされていますが、現在もなお検証中です。 池谷・関彗星以降に、肉眼で長いテイルを魅せたクロイツ群の大彗星は、1970年のホワイト・オルティス・ボレリ彗星、そして C/2011 W3 ラブジョイ彗星があります。ラブジョイ彗星は小ぶりながら、太陽の高熱から生き延び、南天のクリスマスを彩りました。 太陽を掠める彗星群 (サングレーザー) の大部分は、4群即ち クロイツ、マイヤー、クラフト、マースデンの何れかに該当していました。一方、大彗星 1680 V1 に類似した彗星は、ほとんど見当たりませんでした。 ○ C/2012 S1 、アイソン彗星 の軌道要素 2012年9月21日、に発見されたアイソン彗星は、数日後、極めて興味深い軌道要素であることが判別しました。近日点距離 (q )は、0.012 AU と極めて小さく、その他の軌道要素も、歴史的な大彗星である、C/1680 V1 に類似しています。 C/1680 V1 の軌道要素 近日点距離 (q ) 0.006 AU 軌道傾斜角 (i ) 60.6 度 近日点引数 (ω) 350.6 度 昇交点黄経 (Ω) 276.6 度 C/2012 S1 ISONの軌道要素 (暫定) 近日点距離 (q ) 0.012 AU 軌道傾斜角 (i ) 61.8 度 近日点引数 (ω) 345.5 度 昇交点黄経 (Ω) 295.7 度 2つの大彗星は、軌道傾斜角 (i )が 60 度前後と、極めて類似しており、他の数値の類似度からも、同じグループの、太陽をかすめる彗星群である可能性が高いです。 また大小、数千以上の個体を持つクロイツ群と比較し、1680 キルヒ、アイソン、2つの大彗星と同群とみられる小彗星は、太陽探査機 SOHOでも、ほとんど見られず、比較的新しい彗星群と推測されます。 ○ C/2012 S1 、アイソン彗星 の観測条件 etc 池谷・関彗星以降、太陽をかすめる彗星群の内、大彗星に成長したものは、何れも南半球で良い条件でしたが、今回のアイソン彗星は、近日点通過前・後共に、北半球で素晴らしい条件となります。特に高緯度地方ほど良い観測条件です (寒さは厳しいです) 2012年秋〜2013年7月頃までは、ふたご座付近を周回、以後黄道に沿って、かに座、しし座と南下します。日本時間・2013年11月17日(日)早朝頃には、おとめ座スピカのすぐ傍を掠めます。 一般光度式、m ≒ 標準等級 8.0 + 5log△+ 7.5logr で計算すると、日本時間・11月24日(日)頃に 3〜4等級となります。 太陽コロナの中を無事に通過出来れば ※、12月上旬に、肉眼で見えると予想されます。 ○ C/2012 S1 、アイソン彗星 の位置、光度予測データ 近日点通過前
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comet ISON navigator ![]() ※ 標準等級 8等クラスのサングレーザーの場合、近日点通過確率は、約 50% 前後。 (彗星 のテイル (尾) の予測) 彗星のテイル長は、ダスト及びイオン等 の放出量、太陽風(光圧)の速度、彗星核自体の速度(重力) etc を見積もることで、ある程度予測が出来ます。アイソン彗星で期待されるダストテイルは、その大半が近日点通過後の数日以内に、高速度の彗星核から放たれたダストになると予測されます。 微細な粒子は、大きな粒子(星)と違い、重力と光圧をバランスさせた運動方程式となります。より小さな粒子は、太陽風(光圧)の速度により影響されます。即ち、ダストテイルの成長速度はイオンテイルと比較すると、やや遅くなります。 βmax1〜1.5 前後でシミュレーションするのが良好です。 予測されるダストテイルの先端で、テイルが肉眼で確認出来るかは、ダストの放出量等で決まります。なお、 ダストテイルの主体は、珪素系が多く、イオンテイルの主体は、水 (水素、酸素)系が多いです。 (参考文献 etc) NASA http://ssd.jpl.nasa.gov/dat/ELEMENTS.COMET ステラナビゲーター ver7 http://www.astroarts.co.jp/products/stlnav7/index-j.html 彗星・ 最新観測情報 |